親にとって子供の成長は本当にうれしいもの? 『ふたりのマエストロ』から考える
指揮者の父と息子。2人が奏でる不協和音の行方を探る『ふたりのマエストロ』が8月18日公開。
イタリア、ミラノにあるスカラ座は、1778年の開館以来、オペラ界の最高峰ともいわれる劇場です。
そこの音楽監督への就任依頼を受けた父と息子の葛藤を描く『ふたりのマエストロ』が、8月18日より公開。同じ指揮者という職業の親子の関係から、親と子がお互いに向ける思いについて考えてみましょう。
■ふたりの偉大な指揮者たち
8月18日公開の『ふたりのマエストロ』にある「マエストロ」は、イタリア語で「芸術の大家、名指揮者」を意味します。
つまり本作の「ふたり」にあたるのは、父と息子。ふたりとも「指揮者」という職に就き、ふたりとも「名指揮者」とうたわれる巨匠なのです。
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■軍配が上がるのは、父か息子か
そんなある日、父のフランソワ・デュマール(ピエール・アルディティ)のもとへ、1本の電話が入ります。それは、長年夢に見ていたスカラ座の音楽監督就任の依頼でした。
大喜びをする父を見ながら、内心、複雑な思いを抱く息子ドニ・デュマール(イヴァン・アタル)。
ところが、スカラ座が依頼したかったのは、本当はドニのほうだったことが判明し、ドニは父に真実を伝えなければならなくなるのですが…?
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■「最も美しい敗北」とは
一般的に、親は子の成長を喜ぶものですが、この親子の場合は、もっと複雑です。ドニは世襲のように、フランソワの跡を継いで指揮者になったわけではないので、いわばふたりはライバル関係。当然、もとは不仲です。
メガホンを取ったブリュノ・シッシュ監督は、「父親の最も美しい敗北は、息子に追い越されることである」というアリストテレスの言葉をいつも思い出すと語っていますが、まさにフランソワは、最も美しい敗北を喫したといえるでしょう。
それでも最後、スカラ座の舞台で取ったドニの行動は、こうした親子の在り方もあるのだと教えてくれます。「血は水よりも濃い」とはいいますが、逃れられない血のつながりは、例え負けを意味しても、美しくありつづけるのかもしれません。
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『ふたりのマエストロ』
8/18(⾦)ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋⾕宮下、シネ・リーブル池袋 ほか全国順次公開
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(文/fumumu編集部・尾藤 もあ)