『令和の虎』で反響呼んだ「月経ディスク」販売開始 生理用品に新たな選択肢を
日本初・国産の使い捨て「月経ディスク」を開発した向井桃子さんに、販売に至るまでのお話を伺いました。
■「国産で」と決めたものの…立ちはだかる壁
――そこで向井さんは、月経ディスクを教えてくれた友人と“副業”感覚でスタート。当初は、海外輸入を考えていたそうですが、実際に「自分たちで作ろう」となった経緯を教えてください。
向井:最初は輸入を視野に入れて、アメリカの工場に半年くらい粘ったんですけど、全然相手にしてくれなくて(笑)。また、届くものも箱が潰れていたり、月経ディスクに小さなゴミがついていたりすることも少なくなくて。
「体の中に入れるものだから、どんなところで作っていて、どんな素材を使っているか、ちゃんと自分の目で確認したい」という思いから「国産でやろう」となりました。
友人が保険会社の営業だったこともあって、電話でのアポ取りは得意だったんですね。私が作ってくれそうな工場をリストアップして、彼女が電話をかけまくってくれて。50社くらい電話してくれたなかでやっと1社、100年続く大きな会社が興味を持ってくれました。
――しかし、車のゴム製品がメインの企業だったため、医療機器製造を行なっているクリーンルームがある工場を探すことに。ここから1年ほど探し続けた日々のようですが、情熱だけでは心折れそうなこともあったのでは?
向井:私、鉄のメンタルで(笑)。もともと、くじけたり落ち込んだりしないタイプではあるんですけど、なかなか工場が見つからないなかでも「こんなに面白いものだし、やってくれる所があるんじゃないか」っていう、ただその気持ちだけで動いていました。
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■『令和の虎』出演決定で決めた「フェムテックトーキョー」出展
――友人と“副業”感覚だったものの「購入する側も、個人事業主が販売している医療機器は不安もあるだろう」と会社「モナカンパニー」を設立することを決意。しかし、規模が大きくなるにつれ、自分たちの資金だけで突き進むことが難しくなってきたため『令和の虎』へ出演した向井さん。
そんななか、出演する約1週間前…友人は月経ディスク事業の辞退を申し出たといいます。
向井:彼女自身、務めている会社も好きだし、あくまでも副業として…と進めていたので、片手間でできるような作業じゃなくなってきちゃったんですよね。出演してALLになったことで、再度声をかけたんですけど「桃子がひとりで勝ち取ったもの。いまさら戻るのは都合がいいから戻れない」と断られましたが、今も応援してくれています。
――『令和の虎』に出演された時、商品の完成も見えていないなか「フェムテックトーキョー(※)」に出展を決めたことを伝えていますよね(※女性のライフステージにおける、様々な課題解決を目指すフェムテック・フェムケア企業が一堂に会する展示会)。
向井:『令和の虎』に出演すると決まった時に、すぐ申し込みました。商品の認知・拡大について聞かれるのは確かですし、「こういうイベントに出ます」のほうがわかりやすいと思って。キャンセル料は40万円かかるんですけど「40万円なら、なんとかなりそう!」って決めました(笑)。
――「フェムテックトーキョー」で”MOLARA”を知った方たちとの会話で、印象的だったことはありますか?
向井:やはり、はじめて「月経ディスク」というものを知った方が多かったので「ほかの生理用品と何が違うのか」という質問は多かったです。また、現在使っている生理用品にそれぞれに不満も感じていて、解消しきれていない方が多い印象でした。
また、ナプキンやタンポンのように“使い捨て”の商品を使っている方だと、吸収ショーツや月経カップに興味があっても、洗わなくてはいけないことや煮沸しなければいけないことに対して「面倒くさそう」とハードルが高いようで。月経ディスクは、グッとお腹に力を入れるだけで経血を流せるので、手が汚れないことを説明すると喜んでいただけましたね。
「フェムテックトーキョー」では予約受付をしましたが、3日間の出展で180箱ほど予約をしていただきました。
■「タンポンは処女膜が破れる」説、今もなお…
――私自身、生理用ナプキンによる蒸れで不快な思いをしていたことから、月経カップの使用で救われたひとりなんですが、周りに勧めてもナプキン派が圧倒的に多く、タンポンも使ったことがないという人が想像以上に多い印象です。
ナプキンが主流の日本で、さらに見た目ではタンポンよりはるかに大きいものですし「膣に異物を入れる」という行為のハードルが高いのかなと感じましたが、向井さんはどう思われますか?
向井:それは思います。あと、日本で教育するときは平面でしか見せてもらえないですよね。それも影響しているのか、いまでもタンポンが体の中まで入っていってしまう…とか「処女膜が破れる」と勘違いされている方もいます。
30代後半の女性で「処女膜が破れちゃうから、娘にはタンポンを使わせていない」と話されている方もいました。
――向井さんのYouTubeなどでも、模型を使って月経ディスクをどのように挿入するのか説明されています。向井さんがおっしゃった「平面でしか見せない」ことからくる不安は、模型を使っているだけでも解消されるように感じます。
“処女膜破れる説”のように間違った解釈で使ってこなかった人が親になり、同じように間違った説明を伝えて誤解のまま広まっていくのが一番怖いですね…。
向井:そうですね。今でこそYouTubeやTikTokで発信をする方も増えていますが、この数年でまた変わってくるのかなとは思いますし、期待したいですね。
■「MOLARA」日本人女性に合わせた特徴も
――ネットショッピングでは、海外の月経ディスクを手に入れることができますが、向井さんが手掛けた「MOLARA」の特徴を教えてください。
向井:日本人女性の体のサイズに合わせ、リングのサイズを少し小さくしました。そして、フィルムが海外のものにくらべて柔らかい素材なのでスムーズに挿入できるかと思います。また、素材はポリエチレンとエラストマーの2種類だけで、よくオーガニック商品で心配されるBPA(ビスフェノールAという化学物質)もフリーで、ひとつずつ滅菌もしていますので安心してご利用していただけるかなと思います。
――生理のときに感じる苦痛や不快さは人それぞれであり、自分に合った生理用品もそれぞれ。選択肢が広がることで、毎月苦痛・不快な日々を感じている方も、少しはラクになる方法が見つかるかもしれませんね。
向井:私自身、タンポンは取り出すときのガサガサする感じが苦手だったので、ずっと生理用ナプキンをつけていて「生理中は気持ち悪いのが当たり前」と過ごしてきました。
生理用品を変えただけでこれまでの苦痛が解消されたので、入ってくる情報だけではなくて実際に使ってみて、自分に合った生理用品を見つけられるといいなと思います。
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