金のために嘘の記事を書く新聞記者が魂と引き換えにした代償とは? :映画『幻滅』
写実主義とされるフランスの作家、オノレ・ド・バルザックの小説を実写化した映画『幻滅』が4月14日公開。
例えば、バラの絵を描いて、自分では会心の出来だと思ったとします。そしてそのバラを、赤く塗ろうとしたところ、「青く塗ったら、100万円あげるよ」と言われたら、あなたはどうしますか?
19世紀前半、宮廷貴族が復活し、嘘と享楽にまみれたフランス・パリを舞台に、欲望の渦に巻き込まれていく青年を描いた『幻滅』が、4月14日から公開。
はたして「幻滅」した後に残るものは、何なのでしょう?
■仏アカデミー賞7部門受賞作
4月14日公開の『幻滅』は、『ゴリオ爺さん』などで知られる19世紀フランスの文豪、オノレ・ド・バルザックの小説『幻滅 メディア戦記』が原作。
カンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高)賞や、ヴェネツィア国際映画祭金獅子(最高)賞にノミネート経験のあるグザヴィエ・ジャノリ監督が実写化し、フランスのアカデミー賞とも称される、2022年の第47回セザール賞で、作品賞を含む7部門を受賞した名作です。
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■1人の青年が出会うのは「幻滅」か?
時は、恐怖政治が終わり、再び宮廷貴族が台頭してきた19世紀前半のフランス。アングレームという田舎町で、印刷所で働きながら、詩人を夢見る純朴な青年リュシアン(バンジャマン・ヴォワザン)は、貴族の人妻ルイーズ(セシル・ド・フランス)と恋に落ち、駆け落ち同然でパリに向かいます。
ところが、世間知らずのリュシアンは、社交界で笑いものにされ、ルイーズにも愛想をつかされる始末。生活のため、新聞記者の仕事にありつきますが、ほかの記者がそうであるように、次第にお金のために嘘の記事を平気で書くように。やがて富を得たリュシアンは、虚構と快楽の世界に巻き込まれていくのですが…?
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■残酷さと哀愁が響くところ
1人の純粋な青年が、都会にまみれ、本来の夢や希望、崇高さを忘れていく様は、19世紀のフランスではなくても、現代にもあてはまるといえるでしょう。
ジャノリ監督は、力強い文豪の小説を、立体的に映像化するにあたって、「残酷さと哀愁、この2つの音を喧騒が渦巻く中に響かせたいと思いました」と語っています。つまり、夢や希望にあふれている時は、悲しみとは無縁ですが、それを一度でも忘れると、残酷な現実と、哀愁漂う空しさが待っているのかもしれません。
リュシアンが辿る運命は、本作をご覧になって確かめていただくとして、あなたは100万円と引き換えに、青色を取りますか? それともバラは赤いままにしておきますか?
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(文/fumumu編集部・尾藤 もあ)