人に頼ることは恥なのか? ドキュメンタリー映画『94歳のゲイ』は、私たちの意識を変えるキッカケに
1929年生まれの長谷忠さんの姿を追うドキュメンタリー『94歳のゲイ』が4月20日公開。
同性愛が病気とされたころから、激動の時代を生き抜いたひとりの男性をリアルに捉えた『94歳のゲイ』が4月20日から公開になります。
LGBTQ問題が取り上げられる昨今、94歳の同性愛者を通じて、人の生き方について考えてみましょう。
■1929年生まれの同性愛者
『94歳のゲイ』は、大阪在住の長谷忠(はせただし)さんの日々を追うドキュメンタリーです。1929年、香川県で医師だった父の私生児として生まれた長谷さんは、父親の記憶がほとんどなく、物心ついた時から惹かれるのは同性だという自覚があったといいます。
クラフト・エビングが発表した『変態性欲心理』などの影響もあり、当時は同性愛は病気と認識されていました。当然、同性愛者に対する風当たりは強く、長谷さんは、自身の性的指向を誰にも打ち明けることなく、ひとり孤独に生きてきたのでした。
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■ものに頼ることは「恥ずかしい」
そんな長谷さんの生きがいは、詩を作ること。長谷康雄のペンネームで、1963年には現代詩の新人賞とされる「現代詩手帖賞」を受賞、著作も出しています。94歳になったいまも詩を書き続ける詩人なのです。
劇中、長谷さんが遺書を書く場面が出てくるのですが、そのなかで長谷さんは、”無”を目指して生きて来た自身の生き方を「淋しい独りの生き方だった」と表現します。そして、遺書を書くこと、ものに頼ることを「恥ずかしい」と綴ります。
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■「恥」の扱い方を知るために
従来日本は歴史的に見て、異端を嫌う傾向にありました。その理由として、島国に住む「日本人」は、黒髪、黒い瞳の単一民族だったことも一理あるでしょう。つまりは、足並みをそろえ、画一的な統制が取れている方向性が好まれ、そこから外れると、たちまち和の中からはじき出されるのです。
そうしてはじき出されないことが美徳とされ、そのために自らを隠し、他者や社会に頼ることを「恥」とするきらいがあるように見えます。
ですが、社会生活を送る以上、人は必ず誰かのおかげで生かされています。例えば、水道の蛇口をひねれば水が出てくるのは、そんな仕組みを誰かが作ってくれたから。
そう考えると、何かに頼るのは、恥ずかしいことなのでしょうか? 逆に「恥ずかしい」と思い、口をつぐんでしまう人たちのために、私たちは意識を変える必要があるのでしょう。長谷さんの生き方は、そのことに気づくきっかけになるかもしれません。
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『94歳のゲイ』
4⽉20 ⽇(⼟)ポレポレ東中野ほか全国順次公開
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(文/fumumu編集部・尾藤 もあ)