女性のための権利とは? アメリカで活動していた団体「ジェーン」の活動から考える
人工妊娠中絶が違法だった1960年代に、12,000人を救った女性たちを描く『コール・ジェーン –女性たちの秘密の電話-』が3月22日公開。
社会的に、男女平等が認められつつある昨今。ですがそれは、男性優位の時代から、自らの権利を求め、闘ってきた女性たちの歴史でもあります。
1960年代、アメリカで活動していた団体「ジェーン」も、そのうちのひとつ。人工妊娠中絶が違法とされた当時、違法ながらも、12,000人の女性の中絶を手助けしたとされ、やがてこの彼女たちの活動は、中絶の権利が合法だと判決された「ロー対ウェイド判決」につながっていきます。
この実話を基にした『コール・ジェーン –女性たちの秘密の電話-』が3月22日から公開。あれから半世紀以上たった現在、「女性のための権利」はどう変化しているのか、考えてみましょう。
■地下活動団体「ジェーン」の正体
3月22日公開の『コール・ジェーン –女性たちの秘密の電話-』は、1968 年、アメリカのシカゴから幕を開けます。弁護士の夫ウィル(クリス・メッシーナ)と、高校生の娘シャーロットと暮らすジョイ(エリザベス・バンクス)は、何不自由ない幸せな日々をすごす中、2人目の子どもを妊娠します。
ところが、妊娠によって心臓の病気が悪化していると診断されたジョイ。泣く泣く病院に中絶を申し出ますが、中絶は違法であるため、断られ続けてしまいます。そして、町中で偶然「妊娠? 助けが必要? ジェーンに電話を」という張り紙を見つけたジョイは、地下活動として中絶手術を提供する団体「ジェーン」に接触するのですが…?
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■女性らしい「闘う」方法
その後、「ジェーン」の案内で中絶手術を受けたジョイは、この活動をはじめたバージニア(シガニー・ウィーバー)と出会います。2人が出会うのは、手術を終えたジョイが、バージニアやほかの女性スタッフたちがいるダイニングキッチンに通された時なのですが、この場面の明るさが非常に印象的です。
それまでジョイがいた、冷たい手術室とはうってかわって、数人の女性たちが和気あいあいとテーブルを囲み、ジョイにパスタをすすめる部屋のあたたかさ。この対比は、「違法」ではあっても、困っている人がいる「現実」の差を表しているようでもあり、かといって、その差をうめるべく、男性のように力まかせで「闘う」のと違い、それが「違法」でなくなるまで時期を待つように「闘う」、女性らしい方法を象徴しているようにも見えます。
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■勝ち取ったはずの権利が覆るのは
結局、1973年、女性の中絶する権利を認めた「ロー対ウェイド判決」によって、「ジェーン」は活動を休止します。
本作はここで幕を閉じますが、現実の2022 年6 月24 日、アメリカ最高裁判所が「ロー対ウェイド判決」を破棄したことで、中絶の権利は、各州ごとに定められるようになりました。「ジェーン」が勝ち取ったはずの女性の権利は、60年の時を経て、再び覆されている事実は、どう判断したらよいのでしょう?
時代に逆行しているのか、それとも、時代に即しているのか、見極めるのは簡単ではありませんが、少なくとも、権利のために闘った女性たちがいた事実を心にとめておけば、決断を下す時の心強い味方になるはずです。
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『コール・ジェーン –女性たちの秘密の電話-』
3/22(金)より全国公開
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(文/fumumu編集部・尾藤 もあ)