ビル・ナイ演じる市役所職員の姿から、シンプルに考えたい『生きる LIVING』こととは?
がんに侵された主人公をビル・ナイが熱演。人生を見つめなおす『生きる LIVING』が3月31日公開。
1952年に公開された黒澤明監督作品『生きる』。同作をベースに、舞台を第二次世界大戦後のイギリスに移した『生きる LIVING』が3月31日より公開。
黒澤版では、がんに侵された主人公の市役所職員を、名優志村喬さんが演じていましたが、本作ではビル・ナイが同役を好演。本作を通じて、いま改めて『生きる』こととは何か、シンプルに考えてみましょう。
■カズオ・イシグロ版『生きる』
3月31日公開の『生きる LIVING』は、市役所の市民課で働くウィリアムズ(ビル・ナイ)が、医師からがんで余命半年と宣告され、改めて自分の人生を見つめなおすヒューマンドラマ。
ノーベル賞作家のカズオ・イシグロさんが脚本を手がけ、黒澤版とはまた一味違ったラブストーリー要素も含まれた仕上がりに。いずれにせよ、国や時代を超えて、「生きる」という普遍的なテーマを真摯に扱った名作です。
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■「生きる」ことはつまらないのか?
さて、「生きる」と聞くと、私たちは、「生きる!!!」のように、壮大なイメージを抱きがちです。それは例えば、偉人たちの人生を見る時、その人の残した功績に目を奪われて、「あんな立派なことを成し遂げたからこそ、精一杯生きたんだな」と、その人がどんな生き方をしていたとしても、「生きることに全力を捧げた」と判断するでしょう。
一方、ビル・ナイ扮するウィリアムズは、長年市役所職員として、毎日同じように淡々と働き、人生を空虚なもの、つまり「生きることはつまらない」と考えていました。
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■いつか終わりが来るまでに
ですが、ウィリアムが「生きる」ことに全力を捧げるきっかけになったのが、病だったのは皮肉な話です。つまり、それまで「つまらない」と考えていられたのは、「生きる」ことがいつまでも続く無限のように感じていたからでしょう。
実はそれは幻想で、「生きる」ことは有限で、いつか必ず終わりが来る。
そのタイムリミットを意識した時、市井の人であるウィリアムズの目の色が変わります。例え歴史に名を残す偉人でなくとも、いま目の前にある自分の命に向き合えば、人生は答えてくれるのでしょう。
終始口を閉じていた印象のウィリアムズが、陽光を浴びて、振り向く瞬間の笑顔に注目です。
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(文/fumumu編集部・尾藤 もあ)