飾らないごはんでいいんです 『舞妓さんちのまかないさん』の日常感に癒される
おいしいごはん、いつもの日常。ゆるりとした生活に癒される『舞妓さんちのまかないさん』をご紹介します。
キッチンに立つのがおっくうだ、なにも食べる気がしない、でもお腹は空っぽで切ない気持ちになっている…。
そんなときは、ぜひ『舞妓さんちのまかないさん』をパラリパラリとめくってみてください。
淡々とキッチンで作業する“いつも通りのキヨちゃん”を見ているうちに、「…お茶漬けくらい、胃に入れるかな」とむくりと体を起こせるかもしれません。
派手さはない、わかりやすい起承転結もない。けれど確かに、そっと生きる力をわけてくれる『舞妓さんちのまかないさん』。その魅力をお伝えします。
■『舞妓さんちのまかないさん』- 小山愛子さん(小学館)
物語の舞台は、京都の花街(かがい)。花街(はなまち)とも呼ばれる、芸者さんや舞妓さんたちが集まっている地域です。
主人公は、舞妓さんたちが共同生活を営む屋形(やかた)で“まかないさん”として食事を作っている、16歳のキヨちゃん。
もともとは舞妓を目指して、幼馴染のすーちゃんと一緒に青森からやってきたキヨちゃん。ただ、舞妓の才能は開花せず……。ひょんなことから、舞妓さんたちの胃袋を守るべく毎日の食事作りに精を出すことになったのです。
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■変わらないから安心する、キヨちゃんの姿
『舞妓さんちのまかないさん』は、夜の世界で舞妓さんたちのバチバチのバトルがあったり、艶っぽい大人の危険な恋があったり……なんてことはありません。
主人公のキヨちゃんは毎日使い込まれたキッチンに立ち、お味噌汁や菜っ葉の和えたやつ、親子丼やからあげなど、特に珍しいメニューではない“いつも通りのごはん”を作ります。
そんなキヨちゃんの姿が、たまらなくホッとする。
世の中の厳しさにもまれてクタクタになって、泣きながら地元に帰ったときに、自分が子どものころからある大きな木が変わらずそこにいた…という感じでしょうか。「あぁ、まだいてくれた」と、ふぅと肩の力が抜けるのです。
それは物語に登場する舞妓さんたちも同じようで、イライラやモヤモヤがあふれそうなときは、自然とみんなキヨちゃんに会いに行きます。
キヨちゃんは、無理に話を聞きだしません。普段と変わらずに、お鍋の火を確認したり、野菜を切ったり、お米を研いだりします。けれど「あのね」と口に出すと、キヨちゃんは「うんうん」と聞いてくれる。
そんなキヨちゃんと舞妓さんのやり取りを見ていると、なんだか自分まで、キヨちゃんに甘やかしてもらっている気持ちになります。