両親がもし「離婚を考えている」と言ってきたら…熟年離婚の現実

ドラマの中だけだと思っていませんか? 実際増えています。 弁護士が解説します。

両親と女性
(AID/amana images/Getty Images Plus/写真はイメージです)

久しぶりに帰省したら、突然家族が居間に集められ、「父さんと母さんは離婚を考えていて…」と家族会議が始まった──。

こういった話は、ドラマの中だけだと思っていませんか? こうした熟年世代の離婚に関する相談は、現実にも増えてきているのです。



■熟年離婚の現実

長年連れ添った相手と離婚するのは、人生の大きな決断です。老後の生活環境ががらりと変わるので、不安も大きいはず。

しかし、子供も十分に成長し、親の手を離れた今、それぞれの人生を歩みたいと、離婚に踏み切る中高年も増えているのが実情です。



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■財産分与

熟年離婚のポイントとして、ひとつめは財産分与。離婚するときに、夫婦がふたりで築いてきた財産を半分にわけることを指します。

熟年離婚は過ごしてきた時間が長い分、夫婦で築いてきた財産が大きくなることが多いため、わけ方で揉める場合があります。

自宅などの不動産や、保険、預貯金、株式はもちろん、退職金も財産分与の対象になりえます。まずは、何が対象となる財産かを明確にすることが大切です。

離婚したい気持ちだけで家を飛び出してしまうと、相手名義の財産がわからないパターンもあります。相手がもしも財産を隠してしまうと、分与を求めることが難しくなります。

裁判所の調査嘱託などの手続を使い、預貯金が判明することもあるものの、手続が大変なので、離婚の準備のひとつとして、財産把握をおすすめします。



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■年金分割

ポイントのふたつめは年金分割。離婚後に、婚姻期間中に納めた年金保険料に対応するお互いの厚生年金(報酬比例部分)の受け取り金額を調整する制度をいいます。

以前は、年金分割の制度がなく、離婚後、夫の厚生年金を妻はもらえませんでした。とくに妻側は、離婚後の生活の目途が立たず、相手に不満があったとしても、離婚を思いとどまることが多かったといえます。

しかし、2007年(平成19年)4月の年金制度の変更で、夫の厚生年金を離婚時に分割できるようになり、結果として、離婚後も自分の生活のビジョンも持ちやすくなりました。

厚生労働省の離婚の年次推移に関する統計によると、平成に入ってから50代以上の夫婦の離婚率は、昭和の頃と比べて2倍以上に増えています。

また、テレビドラマで熟年離婚が取り上げられたこともあり、熟年離婚は珍しくなくなっています。

ただし、年金分割の対象となるのは、厚生年金のため、夫の仕事がずっと自営業の場合には,年金分割の対象となる年金はありませんので、注意が必要です。

実際に分割した場合、夫婦のどちらがどのように働いていたかによって、実際の受取額の調整が変わってきますので、詳しい話は年金事務所や弁護士など、専門家に聞いてみることをおすすめします。



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■人生100歳時代と離婚

夫婦が最後まで思い合って添い遂げられることが一番です。そうでない場合にも、離婚した後で後悔がないよう、離婚後の生活をどのように成り立たせていくかについて、じっくり考えることが必要です。

人生100歳時代を迎えつつある中、自分の人生をどのように過ごすかを考えるなかで、熟年離婚の選択肢は、これからも増えていくのかもしれませんね。

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(文/fumumu編集部・松下 真由美(弁護士)

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