デヴィ夫人の被害者の傷を無視した“セカンドレイプ” 民事事件にするのは難しいが「道義的責任」を求めることはありえる
デヴィ夫人が連投した「セカンドレイプ」は民事事件になるのか、弁護士に聞きました。
18日、タレントのデヴィ夫人が自身のツイッターに投稿した長文が「セカンドレイプ」だと批判を集めています。
セカンドレイプについて、多くの人が怒りの声をあげるなか「被害者は損害賠償を請求できるのでは」などの意見も見られましたが、実際はどうなのか弁護士に聞きました。
■性被害者に「その時なぜすぐに訴えない」」
デヴィ夫人はツイッターで、国連が動きだしたことに対して「腑に落ちない」「日本国の日本人として、そんな権利がどこに与えられていると思っているのか。あまりにも嘆かわしく、恥ずかしい」と綴り、ジャニー喜多川の性加害については触れずに「偉大なジャニー氏の慰霊に対する冒涜、日本の恥である」と発言。
声をあげて戦っている性被害者に対しては「死人に鞭打ちではないか。本当に嫌な思いをしたのなら、その時なぜすぐに訴えない」など、「セカンドレイプになるため、言ってはいけない」とされている言葉を発信しました。
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■被害者が声を上げられなかった実態を無視するもの」
今回のデヴィ夫人のツイートに対して、齋藤健博弁護士に見解を伺いました。
齋藤:デヴィ夫人は、日本の芸能事務所の問題に対して国際機関が関与することの疑問や、ジャニー氏の個人の生前のふるまいを知るデヴィ氏個人の見解を述べ、死者への冒頭だとの評価を語っています。
そのあとの評価は、忘恩だとの個人的評価を述べていますが、ここで特筆するべきは「被害者が声を上げられなかった実態を無視するもの」です。
――デヴィ夫人が投稿したなかには「既に日本中が知っている事をわざわざ世界に知らしめる必要があろうか」と記した上で、「これが、旧ユーゴスラヴィアのセルビアやウクライナに侵攻したロシア兵による、非情な強姦致死であるとか、ミャンマーのロヒンギャ、チベット・ウイグルの女性が国軍に凌辱・強姦、乱暴された、というのなら分かる」との文章も見られます。
齋藤:なぜ日本人の矜持の問題と結びつけているのかは、個人の価値観にかかわるものだと思うのですが、国際機関による関与と他の事件を結び付けているのは不相当ではないのでしょうか。というのは、もちろん世界には戦時中の者を含め性犯罪・性的ハラスメントは無数にあります。
これと、ジャニーズの各メンバーの気持ちや、思いを我慢しつづけやっと発信できたことと、他の事件との比較とは質が違うということです。
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■民事事件になるのか?
――デヴィ夫人の投稿に怒りを覚えている人のなかには「完全なセカンドレイプ発言。損害賠償請求できるほどのこと」との言葉もあります。実際に弁護士に相談すれば、民事事件になる案件なのでしょうか?
齋藤:デヴィ氏の発言には疑問はありますが、東山さんという特定個人に対するものではあっても、それが具体的に社会的なその人物の評価に対して悪影響を生じさせる事実の指摘ではない点は気になりますね。
デヴィ氏に「道義的責任」を求めることはありえるかもしれませんが、具体的な民事事件にすることは難しいと思われます。
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■「良かれと思って」が人を傷つけることも
――「表現の自由」「言論の自由」は尊重されるべきではありますが、昨今のSNSでは過激な誹謗中傷が目立ちます。今回のデヴィ夫人の発言も現に被害者のなかには傷ついている人も見られました。
齋藤:デヴィ夫人の場合は、社会的影響力ある立場の方の発言です。個人の発言は個人の価値観かもしれません。しかし、個人の発言に対して、発言された側がどのような気持ちになるかは、社会通念で判断されていきます。
社会通念とは、その影響力ある人物がどんな媒体を用いて発言をしたのか、どんな状況に対してどんな内容を発言をしたのかが問われます。デヴィ夫人は、自身の発言力等を「熟慮したとは思われない」と思います。
もちろんデヴィ夫人もおそらく良かれと思って、日本人としての在り方や矜持をもって、発言したのだと思います。しかし、それが被害者や、関係者を傷つけてしまうことがあります。
私個人も何度も、誹謗中傷をうけています。事実に反しているものもたくさんありますし、社会的影響力が大きい方の発言もたくさんあります。ある出来事から以前に私に誹謗中傷を行った人物が、私に誹謗中傷した事実をすっかり忘れていることが明らかになりました。被害者は忘れられないが、加害者にとっては何とも思っていないので忘れるのかもしれませんね。
社会的影響力のある人こそ、自分の価値観を表明することは多いのでしょうが、それが時として大きく人を傷つけることがあります。これは自覚をしてもらいたい、と思っています。
【弁護士 齋藤健博】
自身のLINEIDを公開しており、初回相談はLINEで無料で行うことが可能な弁護士。セクハラや、浮気・不倫問題の解決に定評があり、過去には弁護士ドットコムのランキングトップに名を連ねた経験も。YouTubeではセクハラ時の対応に関する動画なども公開している。多くの被害者の悩みである「セクハラの線引き」や、「残すべき証拠」などを動画で分かりやすく伝えている。
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(文/fumumu編集部・長谷川 瞳)