不思議な縁がつながり、一戸建ての平家をご近所のおばあちゃんから譲り受けた主人公のヒロト。のんびりした平屋での生活は、読んでいるこちらの心にも余裕を与えてくれます。
忙しい毎日に疲れている人にぜひ読んでいただきたい、真造圭伍さんの『ひらやすみ』。
その魅力を、あらすじとともにお伝えします!
■ 『ひらやすみ』- 真造圭伍 さん(小学館)
主人公の生田ヒロトは、釣り堀でアルバイトをしている29歳のフリーター。東京都杉並区「阿佐ケ谷駅」を舞台に、物語はゆったりと始まります。
1話から少しのトゲもなく進んでいくストーリーは、疲れているときでもスルスルと読めるほどの穏やかさ。
ヒロトの生活が変化するのは、あるおばあちゃんがきっかけです。ひょんなことから出会ったふたりは、気づけば意気投合。いつの間にか毎週月木、おばあちゃんがヒロトに夕食をタダで振る舞う習慣ができていました。
そして、そんな仲よしのおばあちゃんから譲り受けたものが、一戸建ての平屋! やがて山形から上京してきた従姉妹のなつみちゃんが加わり、平屋での2人暮らしがスタートするのです。
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■ 答えを探さない主人公にホッとする
29歳、定職なし、恋人なし。
主人公であるヒロトの肩書きを見れば、私たちが暮らす現在の日本では、お世辞にも「安定している」とは言えないかもしれません。本人の気持ちがどうであれ、肩書きだけを見て余計なアドバイスをしてくる人は少なくないですよね。
29歳で未婚なら「そろそろ結婚は?」。フリーターには「そろそろ安定した仕事を探せば?」。恋人がいなければ「いい人を探してみれば?」。
まるでそうすることが正解であると言わんばかりの世間の風潮に、うるせー! と耳を塞ぎたくなることもあるでしょう。
ヒロトに一戸建ての平家を譲り渡したおばあちゃんも、ヒロトにこう尋ねています。
「もーすぐ30だろ。いつまでもそんなフラフラしてないで、結婚とか定職につくとか、次の段階の幸せってもんを考えないのかい?」
ヒロトが返した言葉は、こうです。
「あんま考えたことないんだよなぁ。『幸せ』とか?」
そんなヒロトの返答に、どこか満足したようにフッと笑って、おばあちゃんは言うのでした。
「いいね やっぱいいよ ヒロト。」
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