同性カップルが準備しておきたい「パートナーシップ契約」とは
同性カップルは書面で婚姻に近い権利を得ることができます。弁護士が解説します。
日本では、同性カップルの婚姻が法律上認められていません。しかしながら、将来もずっとパートナーと一緒に人生を歩んでいきたいと考えている人も多いでしょう。
ただ、もしもパートナーを解消してしまった後の財産の管理や子供の養育など、後から問題になることも少なくありません。
そこで、パートナーシップ契約を結ぶ同性カップルが増えてきています。パートナーシップ契約は、別名「準婚姻契約」といい、婚姻と同様の効力を求め、パートナー同士で私的に契約を結ぶものです。
■パートナーシップ契約の内容について
では、パートナーシップ契約の内容には、どんなものが含まれるのでしょうか。
①目的
婚姻に準ずる同居生活を営むことを目的として協力・扶助する。
互いを尊敬し、愛情・誠実・思いやりの心をもって、共同生活を営む。 など
②同居・協力義務
ふたりは同居し、互いに協力し扶助しなければならない。 など
③貞操を守る義務
第三者との性交渉については、これを禁止し、互いに貞操義務を負う。 など
④互いの生活費を分担する義務
共同生活から生じる費用に充てるため、毎月○円ずつ次の口座にそれぞれ入金することとする。 など
⑤家事や介護に関する役割分担
⑥パートナーシップ契約締結前後にそれぞれが形成した財産について
⑦子供の養育
⑧契約解消
次の事項が生じたときは、他方パートナーは共同生活を解消することができる。
・一方のパートナーが不貞行為を行ったとき など
⑨契約解消時の損害賠償規定
本契約に違反し、パートナーシップ契約を解消する場合、違反した者は他方に生じた損害を賠償しなければならない。 など
⑩相続に関する事項
民法上、同性パートナーが相続人になることはできないので、相続の規定を入れることができません。養子縁組か遺贈をするパターンが多いようです。
ただし、残された家族への最低限の財産を侵害することは無効になるので注意が必要です。また、相続に関する部分は、別途、公正証書遺言が確実です。
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■契約の方式や有効性は?
パートナーシップ契約は書面による必要はなく、口頭でも成立します。ただし、後々「言った言わない」の争いになることを防止するため、書面で、かつ公正証書にすることが安心です。
同性カップルの場合、残念ながら民法の親族・相続規定が適用されないので、通常は契約自由の原則により、自由に条項を入れることができます。
ただし、公序良俗に反する規定を入れることはできません。例えば「絶対に別れない」「別れる場合は全財産を相手方に譲渡する」などは無効とされています。
(文/森 伸恵(弁護士))