同性パートナーの浮気で破局…慰謝料を請求できる?
同性婚の婚姻を認めていない現行法であっても、慰謝料を請求できるのか、弁護士が解説します
先月、東京・中野区は、お互いを人生のパートナーとする宣誓書を提出した同性カップルに対し、受領証を交付する方針を発表しました。
都内では2015年に渋谷区と世田谷区が全国に先駆け、全国の各自治体に徐々に広がりつつあります。
しかし、パートナーの成立があれば、解消することもあるでしょう。じつは、現時点で、同性カップルにおける不貞(浮気)慰謝料に関する裁判例は見当たりません。
■浮気に関する慰謝料が認められる?
浮気に関する慰謝料が認められるかは、『不法行為に基づく損害賠償請求』(民法709条)の各要件を満たすかによります。
不法行為とは「故意または過失によって、他人の権利、または法律上保護された利益を侵害すること」になります。
具体的には、同性カップルの関係が「権利又は法律上保護された利益」に当たるかどうかになります。
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■現行法はないけれど
では、どのような人間関係が不法行為において「保護される利益」となるのでしょうか。過去の判例から、ふたつのパターンが見えてきます。
①…婚姻関係か、婚姻に準ずる関係のみ
②…①以外にも不法行為において保護される人間関係があり得る
①では、同性カップルが婚姻に準ずる関係かどうか、判例によって異なります。
同性間の婚姻を認めていない現行法では、婚姻に準ずる関係でないとする場合。一方で、婚姻関係の実体を構成する要素(同居、相互協力、貞操(独占関係))を満たしていれば、婚姻に準ずる関係であるとする場合。
しかし、今もし、裁判で同性パートナーに対して慰謝料請求をした場合、裁判所が現行法に基づいてスパッと棄却する可能性は、ほとんどないでしょう。
また、②は、カップルの実体により。実際の生活状況、当事者間の合意(公正証書)の内容から考慮されます。
同性婚の婚姻を認めていない現行法であっても、慰謝料を請求できる可能性はあります。
ただ、異性間の婚姻と同様の合意をしていたとしても、社会通念上、他の者と性的な交際をしてはならないということを強要する法的な効力までは認めることができないという考え方もあります。
詳しくは弁護士にご相談ください。
(文/森 伸恵(弁護士))