■求められる臨機応変な対応
——日本から台湾に移住してからはどのような活動をされていたんですか?
大久保:台湾を初めて訪れてから、移住するまでの半年の間に、学校、住むところ、プロダクションを決めました。台湾でお仕事できるビザも出してもらって。学校に行きながらオーディションを受けていました。
3ヶ月くらい経って、最初に受かったのは広告の仕事でした。台湾版の『花より団子』で道明寺役を演じられていた、ジェリー・イェンさんが出演されている歯磨き粉のCMで。
最初は台詞がない役柄だったんですけど、監督が当日に「日本人の子だから喋らせたら面白いかもしれない」とおっしゃって、急に台詞を話すことになったんです!
——台湾に行ってから3ヶ月で、いきなり台詞を話すのは難しそうですね…。
大久保:そこまで難しい台詞ではなくて、「あなたはジェリーさんですか?」レベルです(笑)。台湾ではこういう臨機応変な対応が求められることが多くて、そのおかげで中国語も鍛えられました。
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■下積み時代を支えてくれた出会い
——海外でのチャレンジはつらいことも多かったのではないかと思われます。
大久保:オーディションに落ちるのは、そのときのタイミングであったり、その役に合わなかったり、いろんな要素があると思うので、そんなに落ち込まないようにしていました。
でも、海外でお金を稼いで、生活していくっていうのはすごく大変で。最初は、日本で貯金していたお金を切り崩していました。
入ってはこないけど、減っていく残高を眺めながら、あとどのくらい台湾にいられるんだろうって。そういう現実は精神的につらいものがありました。
——日本に帰ろうと思うことはありませんでしたか?
大久保:「台湾に行ってきました」という結果がないままは帰れないと思っていました。
もともと、ひとりで暮らしていたんですけど、友達とルームシェアを始めたり、夜ご飯を抜いたり、節約生活をすごく頑張りましたし、そういう意味でもしがみついてやるみたいな(笑)。
——ルームシェアをしていたご友人は台湾の方ですか?
大久保:はい。CMで共演した役者の子で、すごく良くしてもらいました。
知り合った直後がお正月だったんですけど、日本に帰るチケットがすごく高くて帰れなくて。ひとりで家にいたら、その子が「麻梨子は今何してるの?」と連絡をくれて、実家に遊びに来ないかと声をかけてくれたんです。
家族団らんだし、日本人は遠慮しがちじゃないですか? でも、やっぱりちょっと寂しくて、お邪魔させてもらいました(笑)。
家族の方はすごくあたたかく迎えてくださって、ホンバオという赤い封筒に入ったお年玉を私の分まで用意してくれていて…!
——泣いちゃいます…。
大久保:そうなんですよ! 本当に涙が出てくるくらい優しくしてもらいました。そのときから、私の台湾の家族ってくらい、お世話になっていて。今では私の両親が台湾に来たときも、一緒に過ごしています。