ヴィーガンと精進料理の違いって? 尼僧が伝える「いただきます」の心
精進料理の精神は、食材すべての命を大切にし、食べる相手を思って真心を込め作ること。健康志向のベジタリアンやヴィーガンからも注目を集めている精進料理とは、一体どのようなものなのでしょうか?
肉や魚といった動物性の食品を使わず、野菜や豆類、穀物といった植物性の食材で作る「精進料理」。
野菜しか食べない「ベジタリアン」「ヴィーガン」も動物性の食材を口にしませんが、それぞれどんな違いがあるのでしょうか?
使用する食材や考え方など、それぞれの違いを説明していきます。
■精進料理とは
精進料理の「精進」とは、実は仏教用語で「美食を戒め粗食をし、精神修養をする」という意味があります。
元々は修行僧のための食事のことを指しており、仏教の戒律に基づき、殺生や煩悩への刺激を避けることを目的としています。
「殺生」にあたる肉・魚などの動物性食品や、「煩悩への刺激」にあたる刺激の強い野菜は食べず、野菜や豆類、穀物、海藻、果実、木の実といった植物性食品だけを使います。
「刺激の強い野菜」は「五葷(ごくん)」と呼ばれ、ネギ・タマネギ・ニンニク・ラッキョウ・ニラの5つを指しますが、宗派やお寺によってはタマネギはOKで、かわりに野蒜(ノビル)をNGとする場合も。
これらは性欲を刺激したり、怒りの心を起こすとして禁じられています。また、強いニオイを発する可能性がある食材は、修行の妨げになると考えられています。
精進料理では、たんぱく質は主に豆腐や豆類から摂取し、鰹や鶏といった動物性の出汁はNGで、昆布、干し椎茸、野菜などの出汁を使用します。
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■ヴィーガンとは
一般的には「肉・魚を食べず、野菜、フルーツ、豆類、穀物、海藻、きのこなど植物性食材を食べる菜食主義者」を「ベジタリアン」と呼びます。
ベジタリアンの中にも色々種類があり、「肉・魚・卵は食べないが、牛乳や乳製品は口にするベジタリアン」もいれば、「鶏や牛、豚などの陸上動物の肉は食べないが、魚や卵は食べるベジタリアン」もいます。
ヴィーガンは「完全菜食主義」のことで、ベジタリアンよりも食材の制限が厳しく、肉や魚はもちろん、卵、牛乳、チーズ、バターといった乳製品、ハチミツ、動物由来であるゼラチンなども、一切口にしません。
ヴィーガンは「人間は動物を搾取することなく生きるべき」という考えが根底にあるので、「卵や乳製品を口にするのは、それらを生み出す動物たちを傷つけ、苦しめる」ということで、摂取しないのですね。
食べ物だけを制限しているベジタリアンに対し、厳格なヴィーガンは動物愛護の精神に基づき、食べ物以外の衣服、化粧品、インテリアなども動物性の素材を避けます。
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■ヴィーガンでも精進料理は食べられる?
ヴィーガンでは前述の通り、卵や乳製品を摂取しませんが、精進料理の場合、宗派や地域によっては卵や乳製品をOKとしているところもあります。
卵にはやがてひよこになる有精卵と、ひよこにならない無精卵があり、スーパーで売られているのは無精卵であることから「ひよことして生まれる可能性がないのだから、動物をあやめることにはならない」という解釈です。
牛乳も同様で、牛をあやめるわけではないのでOKという解釈です。牛乳がOKならバターやチーズもOKとなります。
初期仏教では、悟りを得るため厳しい苦行で衰弱した釈迦に、村のスジャータという少女が乳粥を差し出し、そのおかげで体力が回復し、悟りを開くことができたと言われています。
このことから、乳製品に関しては、特に禁止していない宗派やお寺も多いようです。
完全菜食主義であるヴィーガンの場合、卵や乳製品はNGなので、会食などで精進料理をいただく場合は食材に注意が必要かもしれませんね。
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■大切にしたい「いただきます」の心
精進料理もヴィーガンも、それぞれ違いはありますが、共通しているのは「命への感謝」。
忙しい毎日を過ごすうちに、つい忘れがちになりますが、私たちの体は、食べたもので作られています。
目の前の食事ができるまでに携わった、多くの方々の苦労や食材の尊さに感謝していただけば、ただの空腹を満たすだけの食事ではなく、心と身体を養う薬となります。
どんな時でも、感謝して食事をいただけば、自分自身を大切にすることにも繋がります。
そう考えると、毎日、私たちが何気なく口にしている「いただきます」の言葉には、実は、とっても深い意味が込められていることがわかります。
日本人の習慣として、これからも是非、続けていきたいですね。
合掌。
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(文/fumumu編集部・惠心)