おうちで映画三昧のススメ:ブラッド・ピット出演作ならコレ
昨年オスカー俳優となったブラッド・ピットの出演作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に迫る!
■際立つコントラストの美しさ
さて、1969年といえば、当時のアメリカは、ベトナム戦争の真っ只中。劇中、リックとクリフが乗っている車のラジオから、ベトナム戦争の状況を伝えるアナウンスが流れるシーンが一瞬だけ登場しますが、さらに泥沼化していく戦争の惨状とは裏腹に、明るい陽光の差すアメリカ西海岸の風景が、実に対照的です。
ブラッド・ピット演じるクリフは、元グリーンベレー(アメリカ陸軍特殊部隊)に所属していた帰還兵という設定。実際の戦場を経験したクリフ、演技としてスクリーンの中でしか戦場を経験したことのないリックと、こちらも対照的です。
つまり本作には、「コントラスト(対比)」がひとつのテーマになっているのか、そうしたモチーフが多く登場します。文豪ゲーテの言葉とされる「光が強ければ影もまた濃い」を指針とするならば、タランティーノ監督が目指したのは、「相対するものの融合」のような気がします。
戦争と平和、虚構と現実、世界は二律背反でも元は同じなのだ、と。
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■「僕なら、いかだを分けあうよ」
ところで、ブラッド・ピットは、昨年のゴールデン・グローブ賞でも助演男優賞を受賞していますが、その際のスピーチで、こんな言葉をレオに向かって投げかけています。
「僕なら、いかだを分けあうよ(I would have shared the raft.)」。
実はこれ、1998年の第70回アカデミー賞で、11部門を受賞したジェームズ・キャメロン監督の『タイタニック』に対するネタ。豪華客船タイタニック号が座礁して、海に沈むまでの間の乗客・乗員たちの様子を描いた大ヒット作に、レオは、ケイト・ウィンスレット扮する令嬢ローズと恋に落ちる、貧しい青年ジャック役として出演しています。
同作のラスト、海に投げ出されたローズは、流れて来た木のドアにつかまって一命を取りとめますが、そのいかだ代わりのドアをローズに譲ったジャックは、一人海に沈んでいく…という名シーン。そこにつっこんだブラピのジョークですが、この言葉こそが、『ワンハリ』の真髄を語っているようにも思うのです。
「対比(コントラスト)」は争いを生みやすいですが、「分かちあい(シェア)」は、調和を導くもの。
『ワンハリ』のラスト、陰惨な現実が、虚構によって塗り替えられているやさしさに、安堵を覚える人も多いでしょう。
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(文/fumumu編集部・尾藤 もあ)- 1
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