ジュリエット・ビノシュが天才料理人に 『ポトフ 美食家と料理人』からパートナーシップを考える
カンヌ国際映画祭最優秀監督賞に輝いた「美味しい」作品『ポトフ 美食家と料理人』が12月15日公開。
19世紀のフランスを舞台に、食を通じて固い絆で結ばれた男女を描く『ポトフ 美食家と料理人』が12月15日より公開になります。
ジュリエット・ビノシュが料理人を演じ、美食家を、プライベートでも元パートナーのブノワ・マジメルが好演。そんな2人の姿を通して、パートナーシップの在り方を考えてみましょう。
■『ポトフ』で皇太子を…?
12月15日公開の『ポトフ 美食家と料理人』は、名匠トラン・アン・ユン監督がメガホンを取り、第76回カンヌ国際映画祭最優秀監督賞に輝き、第96回アカデミー賞国際長編映画賞フランス代表にも選ばれた作品。
ジュリエット・ビノシュ扮する料理人ウージェニーは、美食家ドダン(ブノワ・マジメル)の考えたメニューを完全に再現する天才。2人は強い絆で結ばれているものの、ドダンのプロポーズをウージェニーはいつも断っていました。そんなある日、ドダンはあえてシンプルな家庭料理「ポトフ」で、ユーラシア皇太子を魅了しようと挑戦するのですが…?
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■調理するリアルな音がBGM
特筆すべきは、本作ではほとんど音楽が使われていないこと。タイトルの『ポトフ』にあるように、料理がテーマの作品ですから、BGMとして聴こえるのは、材料を切る包丁の音や、煮たり焼いたり、まさに調理する時のリアルな音ばかり。
冒頭からドダンとウージェニーがずっと料理をしているシーンが、切れ目なしに流れていくのは圧巻で、次々とおいしそうな料理を生み出すふたりの関係が、魂レベルで信頼しあっているのがしっかりと伝わってきます。
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■すでにある愛を求め続ければ
それは、ミシュラン三ツ星シェフのピエール・ガニェールが、本作の料理監修を担当している部分もあるでしょうが、じつはお互い元パートナーとして、子供も授かったジュリエットとマジメルの関係が影響しているとも思えます。
劇中、ドダンがウージェニーへの思いを語る中で、「すでに持っているものを求め続けるのが幸福だ」と伝えるシーンが登場します。それは、アウグスティヌスの名言だそうですが、例え恋人同士は別れても、結婚しなくても、お互いを愛した記憶は「すでに持っているもの」といえます。もしかすると、「パートナーシップ」は、私たちが考えている以上に、自由で穏やかで、やさしいものなのかもしれません。
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『ポトフ 美食家と料理人』
12/15(金)Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座、ほか全国順次公開
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(文/fumumu編集部・尾藤 もあ)