アイドルが「恋愛禁止令」破ったら…運営側は損害賠償を請求できる?

アイドルの恋愛禁止は合法か? 弁護士が判決事例を交えて解説します。

アイドル
(kumikomini/istock/Thinkstock/写真はイメージです)

人気アイドルの熱愛が報道され、ショックを受けた経験がある人は、少なくないはず。

いつの間にか卒業が決まっていた…。センセーショナルな報道の裏に、「アイドルは恋愛禁止」と聞いたことがある人も多いでしょう。

 

■恋愛禁止は契約に盛り込まれる

日本のアイドルグループは、「恋愛はご法度」のルールが暗黙の了解となる風潮があります。

具体的には、芸能プロダクションとアイドルの間で締結される業務委託契約書(マネジメント契約書)の条項に「ファンと交際、また、それによりマネージメント会社が損害を受けた場合は直ちに損害賠償請求できる」と盛り込まれます。

ファンに限らず、「男友達とふたりきりで遊ぶ」「写真を撮る(プリクラも含む)」を禁止する事務所もあります。

 

■恋愛禁止条項の有効性

こうした条項が有効かどうか、意見がわかれています。

日本の法制度の前提として、「契約自由の原則」があります。誰がどういった契約を結ぶかを、当事者同士の合意により自由に定めても良い、という原則です。

ただ、例外があり、個人の人権を侵害するような契約は、公序良俗に反し無効、すなわち、そのような契約を結んではいけないのです。

個人の人格形成に大きく関わる「恋愛」が契約により拘束されるので、契約は無効との考え方もあります。

 

一方で、アイドルビジネスは、ファンがアイドルとの疑似恋愛で成り立っている側面があります。

アイドルが異性として好きだからこそ、ファンはアイドルのライブや握手会に行くビジネスモデルからすると、当然、アイドルは他の異性と交際をしていないと前提する必要があるともいえます。

俳優や女優に比べ、アイドルは清廉さを重視されるので、熱愛発覚でファンに与える影響は大きいと考えられます。

事務所側もビジネスとしてアイドルを売り出すのに、損害を未然に防ぐために恋愛禁止条項を契約に盛り込むことがあるのです。

 

■アイドルに損害賠償を求める背景は?

芸能事務所がアイドルの恋愛の自由を制限してまで条項を作る背景には、アイドルを育てるには、相当なお金がかかります。

ライブ中心のアイドルであっても数十万円単位、大手プロダクションになれば数百万~数千万円がかかります。

手塩にかけて育てたアイドルだからこそ、恋愛が発覚した場合、ファンが離れてしまったり、イメージが変わったりして生じた損害を、アイドル自身から回収したいと考えるのは、無理もありません。

マネージメント側がアイドルと異性との性的な関係ないし、事実の発覚を避けたいと考える。契約等において、アイドルの恋愛を制限する規定を設けることも、マネージメントする側の立場では、一定の合理性があると考えられます。

 

■実際に損害賠償の請求はできるのか?

ただ、実際にアイドルから損害賠償を請求できるかについては、判断が分かれています。

2015年9月の地裁判決では、会社が初期投資した一部の費用を、元アイドルも負担する内容の契約に基づいて、アイドルに対する65万円の損害賠償請求を認めています。

また、2016年1月の地裁判決では、アイドルにも自由恋愛の権利があるとし、所属事務所が恋愛禁止条項違反で損害賠償できる場合は、アイドルが所属プロダクションに積極的に損害を生じさせようとの意図(害意)がある場合に限られる、と判示し、プロダクション側の請求を退けています。

事案により判断が異なっており、今後の裁判で違う結論が導かれる可能性は十分にあるでしょう。

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(文/fumumu編集部・松田 有加(弁護士)

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