「好き」と「性欲」と<前編> ~アダルト業界関係者の喋り場~
アダルト業界の作り手側で働く女・るいが、無限に広がる「性」の世界…ファンタジーを通して見る「リアルな性」の話を、本音でお伝えしていきます!

アダルト業界の作り手側で働く女・るいが、無限に広がる「性」の世界…ファンタジーを通して見る「リアルな性」の話を、本音でお伝えしていきます。
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■「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」
「経験人数は何人くらいですか~?」 女優希望で面接に来る女性に対して、必ず聞く質問です。
反応は様々で、はっきりと人数を数えていらっしゃる方もいれば、「あんまり覚えていないです」という方もいます。
私はどちらかというと後者で、ざっくりとした人数しかわかりません。正確に言えば「途中までは数えていたが、途中から数えるのをやめた」が正しいです。途中までは、経験人数が増えることに、どこか罪悪感を感じていたからです。
私は大学生の途中まで、とても【ロマンティック・ラブ・イデオロギー】の強い子供でした。これは社会学の概念なのですが、かいつまんで言うと「恋愛・結婚・生殖はすべて一人の相手によって担われるべきという社会の通念」で、もっと嚙み砕いて言えば「好きな人と結婚して、出産することが当たり前で、素晴らしいという考え方」です。
恋愛ドラマなどで「理想」として描かれるこの通念に、私は幼少期より強いあこがれを抱いていて、「はじめて付き合った相手とそのまま結婚する。セックスもその人としかしない」と思い込んでいました。それが自分にとっての幸せだと、疑いもしませんでした。
さて、そんな気持ちの私でしたが、あこがれて臨んだ初体験で、思い描いていた「セックス」との違いにざわざわとした感情を覚えることとなります。
原因として、ひとつには前の記事でも書いた「『見る』セックスと『する』セックスの違い」というが挙げられるのですが、もっと大きな視野で考えると、「お互いに『好き』と『性欲』を同一視していた」というのも大きな原因の一つだったと、今となっては思っています。
関連記事:「見る」セックスと「する」セックス ~アダルト業界関係者の喋り場~
■初めての、彼氏以外とのセックス
初体験から1年ほどの間、私は当時付き合っている彼氏としかセックスをしたことがありませんでした。回数を重ねるうちに、身体はそれなりに開発されてきたのですが、どこか気持ちが満たされないままでした。
彼氏と交際中のある日、お酒の勢いで、男友達Aくんにセックスに持ち込まれました。当時の私にとっては全く予期せぬ展開でした。しかし、ハタチになりたて、まだ慣れないお酒で舞い上がっていた私は、罪悪感を抱きつつもAくんを受け入れてしまいました。
そしてそれが人生で初めて、「とても気持ちいい」と思えたセックスだったのです。
はじめは、そのAくんはそれなりに経験が豊富なので、テクニックの違いなのだろう、と思いました。しかし、圧倒的に違ったのは、何より精神的満足度でした。彼氏に対する後ろめたさにも苛まれ「なぜなのだろう」と自問自答するうちに、AVを見るうちに感じていた「欲が見えたときに興奮する、逆に欲が見えないと興奮しない」という精神的な部分の違いが表れたのでは? という結論に達しました。
簡単に言うと、彼氏のセックスは「なぜセックスをしたいのか」という部分が全く見えてこなかったのです。
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